2011年01月21日

大卒内定率最低に対する感想(3)・・・濱口桂一郎著「新しい労働社会」を参考に考える。

 今回の大卒内定率は、前回の就職氷河期よりも低いという。それが、マスコミ始め政府が大騒ぎしている理由であるが、前回の就職氷河期について、前に本ブログで紹介したことのある「新しい労働社会」の中に次のような記述がある。
 濱口圭一郎著 新しい労働社会―雇用システムの再構築へ (岩波新書)

 バブル崩壊により企業の採用抑制が厳しく、学校卒業時の選択肢も乏しかったために1990年代半ば以降、若者の間で失業者や非正規労働者が急速に増大しました。2000年代半ばまでには景気の回復により新卒採用が活気を取り戻したにもかかわらず、いわゆる就職氷河期に非正規労働者にならざるを得なかった年長フリーターと呼ばれる世代は取り残され、非正規雇用に滞留したまま次代に中年化していくという事態が進み、社会保障システムの脆弱化や少子化の進展が懸念されるに至りました。

 今回もこのままいけば前回と同じ轍を踏む恐れがある。非正規雇用は解決したわけでも、年長フリーターがいなくなったわけでもないので事態はより深刻になる可能性が出てきたわけである。

 なぜこんなことになってしまったのだろうか。

 もちろん高度成長の時代のように、経済が伸びていればこのようなことが表面化することはないだろうが、「新しい労働社会」の著者濱口桂一郎は、それよりも、前の就職氷河期に起きた事態を、高度成長期の末期、1973年の石油ショック後の労働政策の転換によるものが大きいと言う。

 それまで近代的な職種と職業能力に基づく外部労働市場の確立を目指していた労働政策も、一九七三年の石油ショックを契機に、企業内部での雇用維持を最優先させる方向に大転換します。これに伴い、それまでの社会的通用性ある技能に着目した公的人材養成中心の政策は、企業特殊的技能を身に付けるための企業内人材養成に財政的援助を行うという方向に大きく舵が切られました。 

 つまりこの時期に「企業内部の雇用維持」に重点を置いた現在の日本の雇用システムが完成したとわけで、それと軌を同じくして企業外の公的人材養成システム=高校、大学、職業訓練校などの弱体化につながっていると濱口は考えている。濱口の問題意識はなぜワーキングプアが増えたかということに焦点が絞られているが、濱口の考えをわれわれの問題意識に引きつけて敷衍すると、この公的人材養成システムの弱体化が、新卒一括採用にも影を落とすことになる。図式化すると次のようになる。

 企業内部での雇用維持が出来ない→企業内人材養成が出来ない→企業外に人材を求めても弱体化しているので採用出来ない→新卒は採らない。

 これはあまりにも単純化した図式だが(詳しくは『新しい労働社会』参照)、要は新卒を採る理由が企業側になくなりつつあるということを示唆しており、それは今後も続くことになるだろう。

 ここまで書いてようやく問題の解決が見えてきた。
(この項続く)
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posted by 阿Q at 20:01| Comment(0) | TrackBack(0) | 社会 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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