2010年05月01日

ジョブは可能か? 新しい労働社会・・ 雇用システムの再構築へを読む(2)

 今年になってマスコミが特に騒いでいたのが、若者、高校生や大学生の新卒の就職率の低さである。大学生、高校生とも今年の就職内定率は80%位だから、約2割の人が卒業しても就職出来ないことになる。就職氷河期といわれた2002年も同じ現象だったが、それ以来の低さで、しかも今回の方が就職できる業種が狭まった分、問題が深化したといってよい。

 いくら100年に一度の不況といっても、これからの日本を背負う世代の失業率がこれだけ低いと、マスコミが騒ぐのも当然だと思う。なぜこんなことになってしまったのか。

 本書、新しい労働社会・・・雇用システムの再構築(岩波新書)を読むとそのことの意味がわかる。

 著者の濱口桂一郎によると、日本の雇用システムの本質がその雇用契約にあるという。雇用契約とは、「当事者の一方が相手方に対して労働に従事することを約し、相手側がこれに対してその報酬を与えることを約することによって、その効力を生じる」(民法第623条)ことにある。(序章2ページ)

 濱口によると、この民法に表れているように、日本の雇用契約では、「具体的にどういう労働に従事するかが、明らかではない」というのが、特質になっているという。つまり、

 どういう種類の労働を行うか、例えば旋盤を操作するとか、会計帳簿をつけるとか、自動車を販売するといったことについては、雇用契約でその内容を明確に定めて、その範囲内の労働についてのみ労働者は義務を負うし、使用者は権利を持つというのが、世界的に通常の考え方なのです。(序章2ページ)

 具体的な職務(ジョブ)が定まっておらず、いわばその都度職務が書き込まれるべき空白の石版であるという点が日本型雇用システムの最も重要な本質なのです。 (序章3ページ) 

 濱口はこういう雇用契約の法的性格は、一種の地位設定契約あるいはメンバーシップ契約という。要するに、メンバーに入るか、入らないかの契約であって、その職務(ジョブ)の内容は問わないというわけだ。

 この濱口の定義は、なぜ新卒の一括採用が延々と続いているのか、なぜ定年退職という制度で一斉に退職するのか、さらになぜ中高年の転職、再就職が困難なのか、が良く理解できる。一括して採用し、その中で教育し、トコロテン式に出ていく、まるで学校のような感じがするが、ある意味、手間がかからないという意味で合理的でもある。そのメンバーの入り口が新卒の一括採用であり、出口が定年退職ということになる。

 濱口はこの雇用契約が、日本の、長期雇用制度(終身雇用制度)、年功賃金制度(年功序列制度)、企業組合という”三種の神器”の前提になった、あるいは飛躍を恐れずに言えば要因になり、さらに日本経済の高度成長に繋がったとみている。濱口の言う「コロラリー」(論理的帰結)はそのように解釈できる。(濱口自身は、日本経済うんぬんは言っておらず、単に前提としか言っていないが)

 その日本経済が揺らいだきた結果、冒頭のような新卒の就職率のある意味突然の低下に繋がったということは言えるかも知れない。
(この項続く)

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posted by 阿Q at 06:33| Comment(0) | TrackBack(0) | 書評 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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